『For The Players By The Players』は 桂川有人が思い描く“記憶に残る1打を打てる選手”になるための資金石
2023年はPGAツアー下部のコーンフェリーツアーを主戦場に戦っている桂川有人。2022年に群馬県の「THE CLUB golf village(旧:THE RAYSUM)」で初開催されたJGTO主催トーナメント『For The Players By The Players』には、そのコーンフェリーツアーの予選会出場などもあり欠場していたが、2022年末に「THE CLUB golf village」を訪れ、コースを体験してもらった。その際に桂川が感じたのは、コースこそが選手のポテンシャルを引き出す唯一無二のツールになるということだ。
コースに対しての印象を「グリーン周りの形状から、高い技術が求められるコースだと感じました。ただ、ここには外しちゃいけないという場所があるのはいいんですが、逆にここに打てればピンに寄っていく。そんな仕掛けがあっても面白いのかなと思いました」と話す桂川。
単にセイフティーかどうかではなく、きっちり攻めるべきところに打てた時にはバーディやイーグルが獲れる。そんなコースセッティングこそが、選手の挑戦心を奮い立たたせて、面白いゲームを演出することになると言うのだ。
桂川にとって挑戦することは自身のライフスタイルであり、もっとも大切にしていることで、挑戦する姿を見せることがプロとして生きる道だと考えている。
「(トーナメントで)優勝することも大事なんですけど、心に残るショットというか、記憶に残る1打を打つことへの憧れがあります。それを打つためには練習するのみですし、もちろん経験も必要になります。自分の中に“同じことをやっていても変わらないじゃないか”っていう思いがあって、いろんなことに挑戦することで、今の自分を超えていけるというか、新しいことができるようになるんじゃないかと思っています」。
桂川の挑戦人生は中学卒業後に単身でフィリピンへゴルフ留学したそのときから始まっている。言葉も通じない、治安的にも日本ほど良くはない海外で1人生活するのには、もちろん不安もあっただろうし、簡単なことではなかったはず。しかし、桂川は挑戦することを楽しみに変え、見事に自らの成長に繋げた。そんな経験が今年の米ツアー挑戦にも生きている。
「あんまり苦しいとは思わなくて、それ(米ツアー)に挑戦できていることに幸せを感じますし、やりがいも感じます。その場、その場を楽しむというか、人生を楽しむというか。あんまそのあたりは深く考えてないかもしれません。ただ、あの時出来なかったショットに対して、なぜ出来なかったかを考えながら練習したり、その場面のシチュエーションで練習するようにしたり、そうしたら自然とできるようになって。そういう挑戦の繰り返しなのかなと思います」。
米ツアーでプレーすることで得たのは考える力だ。そうさせているのは間違いなくコースの存在であり、コースセッティングにある。桂川が言う挑戦したくなるコースとは、同時に選手に考えさせるコースでもある。そう言う意味で、桂川自身が、いまだ経験したことのない「ステーブル方式」は、コースへ挑戦しがいのある試合形式として興味を抱いている。「良いショットをしたらご褒美があり、失敗したら罰もある。それにちゃんと差ができる方式っていう部分では、モチベーションが変わったり、考え方が変わったりすると思うので、そこは楽しいかなと思います」。
日本のコース、特にプロのトーナメントが開催されるコースではマネージメント力が重視され、挑戦と言うキーワードが二の次になる傾向がある。だからこそ「ステーブル方式」にはそれを払拭できる可能性がある。選手に挑戦しようと思わせる。もちろんそのためにはコースも重要になり、選手目線でのコース作り、環境作りへの参加が必要になる。『For The Players By The Players』とは自分たちによる自分たちの大会を意味するが、桂川自身も「自らコースに携わって、コースと自分達選手が一緒になって作り上げていく。世界に通用する選手を出していくためにはコースも大事で、記憶に残るショットが打てるようなコース作りだったり、自分達の力を加えたコース作りだったりに参加していけたらいいなと思っています」と話す。
世界に通用する選手を育てるには環境が重要であり、そのために『For The Players By The Players』は選手とともに成長し続けていかなければならない。桂川発信のアイデアも2024年大会では大いに反映されていることだろう。